東山の碧螺春をもとめてまさに清明節(4月5日)の前の4月2日に訪れました。(2003年4月のレポートです)
明前とは清明節の前のこと
清明節とは日本でいうお盆で、一家全員でお墓参りをします。この清明節の前のことを「明前」といい、お茶の名前の前につけられて、「明前碧螺春」「明前龍井茶」などといわれています。
ちょうどこの清明節の前には新芽がゆっくりと伸びてきて、水分と栄養分が茶葉にたっぷりと含まれて最高にいい状態になります。その新芽のやわらかい部分を摘み取ることで甘みのあるおいしいお茶になるのです。「明後」から気候はあたたかくなり、雨がよく降るようになりるため新芽がどんどんと大きくなっていきます。
碧螺春の産地、東山
碧螺春の産地、東山は蘇州の西南に位置して太湖にせり出した半島になっています。美しい風景からも観光の見どころもいっぱいあり、いろんな花や果物の木が栽培されています。
果樹園の中にお茶の木が(低いのがお茶の木)
お茶を摘む季節は1年に一回きり、あとは何をするのだろうと思うところですが、4月はお茶、4月から5月は桃、5月は梅、この梅とは話梅(干して塩を加えたもの)に加工します。5月から6月は枇杷、7月は楊梅、8月は栗、10月は銀杏と、いろんな種類の果物があり収穫されます。茶農家といってもほとんどがお茶以外の果物を栽培している農家さんなのです。
低いのがお茶の木
東山では豊富な果物が植えられている合間合間にお茶の木があり、そのため碧螺春は甘い果実のような味わいがあるといわれています。このときはちょうど、桃の花が満開のころで美しい風景の中で茶摘が行われました。
桃の花が満開に…ここ東山ではお茶だけの産地ではなくいろんな果物が栽培されています。
碧螺春の茶摘み
ほんの少しの茶摘みの期間しかないので、この時期農家の方たちは自転車に乗ってきて、お茶の木の前でカギもかけずに自転車をおき、茶摘を開始します。
新芽の先部分だけを丁寧に摘み取っていきます
お茶のほんの先っぽの新芽の部分だけを指でひとつひとつつまんでいく気の遠くなるような作業です。カゴにいっぱいになるまで、茶摘を続けていきます。1日にひとりで摘める量はたったの250gほど。とっても贅沢なお茶ということがわかります。
小さな新芽だけなのでカゴいっぱいになるのも大変!
茶摘が終わると急いで自転車で戻らないといけません。醗酵がはじまるのですぐにお茶を作ってしまいわないといけないからです。
自転車で急いで戻ります
碧螺春の選別
茶摘からもっどってきたらすぐに摘みたての茶葉(茶菁といいます)を選別していきます。
茶菁の選別作業。ひとつひとつすべて手作業です
まずはいらないものを取り除き、選別ももちろん手作業でひとつひとつ行います。きれいに芽がそろったものとちぎれたものとに分けていきます。ちぎれたものも、もちろん茶葉ですので大事にとっておき、こちらは農家さんの方たちが飲むそうです。
NGの茶菁は農家さんたちで飲みます。
碧螺春の釜入り工程
選別した後に釜炒りの工程にと続きます。ここからがご主人の出番です。
丁寧に釜で炒っていきます(殺菁といいます)。炒っている間は手が離せないため火の調節はご主人の指示のもとに火力を強くするときは薪を追加して、弱めるときは中の薪を少なくしたりと火の調整を行います。
薪は時間のあるときに、まめに取りに行って準備しておきます。他の農家も薪を取りに行くので、なくなってしまっては大変です、家の前には取ってきた薪が並べられています。
釜に薪を入れたり出したりして火を調節します。
始めは下から大きく手を下からまわしながらすくうようにして炒って行きます。状態を見ながら、今度は茶葉を揉んできます(揉捻といいます)。手のひらと手のひらをこすりあわせるようにまわして揉んでいきます。
そのうちふわふわとしたまさしく碧螺春が出来上がっていきます。まもなく完成です。その日のうちに作ってしまわないといけないので、茶摘後は大忙しです。
無事に新鮮なお茶ができました。ここでやっとこの新茶をわけてもらいました。本当にお疲れ様でした。貴重な心のこもったお茶に感謝の気持ちでいっぱいです。写真を後日送ることを約束して東山を後にしました。
ご主人のお父さんとお子さん
お茶の花